キルボット(Chopping Mall)感想 ネタバレあり
本国版ポスターから漂う圧倒的スラッシャー感よりも、邦題の方が中身にバッチリあっているという珍しいパターン。’ショッピングモールで殺人鬼が暴れる’というアイデアが先行していたそうなのでこうなったのかもしれない。ティーンエージャーと暴走した警備ロボが閉鎖空間と化したショッピングモールで戦うというシンプルなプロットだというのに、後に政治的なメッセージを考察勢に付け加えられていたというのが驚き。
流行っていたであろうホラー・SFから要素をマッシュアップしまくっているのに舞台と登場人物の数が限られている為か破綻した感じは感じられない。寧ろかなり小気味良くまとまっている。特に『ゾンビ』独特のゆるさとかのエッセンスをトレス出来ている気がする。若者をガンガン処刑していく警備ロボットの装備がガチすぎるのは全くもってゆるくないのだが。
結末が前回紹介したセミマゲドンや他のスラッシャー映画群と違ってオタクにとっても優しいのがミソ。数年前のインタビューで女性と出かけるのが何よりもストレス解消になると語っていたWynorski監督であるが、全般的に抑え目なエログロの中ギャルが割と悲惨に爆死しているのも見るにオタクの深層を抉り取るのに相当手練れていたのだろう。この侮れなさこそが冒頭の考察を呼び起こした・・・というのは思考があさっての方向に行き過ぎであろう。
セミマゲドン 感想 ネタバレあり
エアロの主題歌も地球規模の危機も影も形もないが、主人公のビジュアルと死にざまがまあ・・・似ているかな・・・
ポスター1枚目は完全にパケ写詐欺。2000年代の登場人物が誰も出てこないポスターからインスピレーションを受けたらしい。2枚目は大体あってる。
演技がゴミだろうとストーリーラインがチープだろうとクソ映画の中では見れる方だと思う。ぽっと出の署長や陰謀論者のフリしたじじいがいい味出してるし、メインキャラもテンプレから大きく外れないながらマヌケで良い。主人公のフルスイングで安楽死させられちゃうナードが何といっても至高。カリフォルニアが舞台ってだけなのにHOLLYWOODの看板燃やしちゃうのも罰当たりで〇。
全体的にダラダラしてないし、セミがモータルコンバットばりのフェイタリティをかますグロシーンやストリッパーをふんだんに使ったエロシーンが力入ってて、見てるこっちもやけくそ気味になって応援したくなってくる。セミの犠牲者がバラエティに富んだ死に様をたっぷり見せつけてくれるので飽きない。
ラストも結局セミも人間もやることやりたいだけってのもが風刺効いてる。1時間半思い切って投げ捨てよう。
Alice in Chains-Live Facelift 感想
Alice in Chains-Live Facelift
- "Man in the Box"
- "Real Thing"
- "Love, Hate, Love"
- "Sea of Sorrow"
- "Bleed the Freak"
- "We Die Young" (videoclip)
- "Man in the Box" (videoclip)
- "Sea of Sorrow" (videoclip)
1991年のライブ映像作品でフォーマットはVHS。2016年に未収録だった"It Ain't Like That"を追加した上でレコードで再発されたが本作の高いクオリティに見合った扱いを受けているとはいいがたい。違法アップロードを除いてはネット配信もされていないようだ。Amazonでは品切れっぽいし、MCが少ないのでさほど問題ないとはいえDiscogsでも字幕なし版しかほぼ売っていないし、メ〇カリなどにもあまり放流されていないので少し入手難易度が高いかもしれない。
MTV Unpluggedではもうかなりげっそりしていて歌声も弱弱しかったレインだが、本作で見られるステージングはとにかくパワフル。観客に軽くジョークを飛ばす余裕もある。後に見られるダウナードラッグ的な危うい魅力は削がれているかもしれないが、前身のLAメタルバンドで培ったのであろうロックスター的立ち居振る舞いとパワフルな歌声で会場を圧倒していた。もともと185㎝とタッパがある人なのでこういう一番ストレートなパフォーマンスは特に映える。
リズム隊のパフォーマンスも堅実そのもの。ジェリーとのシンガロングもこの時点で抜群。静のジェリー、動のレインといったコントラストが後の作品群と比べてよりはっきりしている。本作解説の森内淳氏は「バランスを求めている自分は、アンバランスな生き物なのだ」というメッセージを彼らのスタイルから見出されたようで、以後の作品よりやや直接的に人間の心理なりなんなりの奥深さが本作のパフォーマンスで表現されていることがここからまた感じられる。
それに、VHSは音質ならデータに大きく遅れを取っていない気がするし、本作のミックス自体もいいので中古のスマホで録音したようなブートレッグ並みのクオリティでがっかり、ということはない。映像がモノクロなのはこの音により集中して貰いたいという制作側からのメッセージなのでは。
途中からかなり暑くなってきたのかレインはネルシャツを脱ぎ、サングラスを外し、最後の方にはTシャツも脱ぎ、上裸になって色気を振りまいていた。他のメンバーもカッコいいので会場の姐御たちはさぞ満足されたことであろう。あまり観客の方にパンされないので追体験勢も安心だ。
この熱気とテンションで演奏される"We Die Young"や"I Know Somethin (Bout You)"なども収録されていたら尚嬉しかったがちょっと狼戻が過ぎるだろうか。ボーカルがウィリアムに変わっても同じ節で作品をリリースし続けている彼らだが、オリジナルスタジオアルバムともアコースティックアルバムともまた微妙に違った初期の彼らを焼き付けているという点で大いに存在価値があり、また、冒頭で述べたように再販がさっぱりという点で罪作りな作品である。